前回までの話↓↓

第1話 脱サラ直後の話①

第2話 脱サラ直後の話②

第3話 脱サラ直後の話③

第4話 脱サラ直後の話④

第5話 脱サラ直後の話⑤

第6話 脱サラ直後の話⑥

第7話 脱サラ直後の話⑦

第8話 脱サラ直後の話⑧

第9話 脱サラ直後の話⑨

第10話 タツヤという男①

第11話 タツヤという男②

第12話 タツヤという男③

第13話 新居はいわくつき物件①

第14話 新居はいわくつき物件②

以下、本編。

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身に付けていた僅かばかりのブランド物を質に入れ、手に入れた現金10万円。

それを元手に、俺は何が出来るかを考えていた。

サラリーマン時代、勤めていた会社は通信総合商社。

つまり、数ある通信キャリアの商品を代理店として販売する総合商社だった。

そこで、とにかく俺は会社が売れと命令したものを売りまくった。

商品の良さなどどうでも良い。

何なら欠陥商品だって、その辺の石ころだって高値で売る自信はあった。

 

実際に、誰にでも、どんな状況でも売った。

見込み客にニーズがあるか、それが相手の為になるかどうかなど二の次。

とにかく、売って売って売りまくった。

全ては会社の為、そして、自分の出世の為だった。

打率6割売ればトップセールスと言われた業界で、俺は打率9割以上の結果を出していた。

そしてトップセールスとして、数ある賞を受賞した。

…。

それだけ書けば、ただの自慢の自己満日記になってしまうが。

そんな俺も、今や昔。

兵どもが夢の跡では無いが、過去の栄光だ。

言うだけ、滑稽に映るだけである。

過去の実績に、すがるつもりも無かった。

だが、独立独歩で事業家を目指すからには決めたことがあった。

他人の商品は二度と扱わない。扱うのは全て自社商品のみとする。

 

他社商品は、売値も利益率も第三者に決められてしまう。

全ては、メーカー、キャリア様ありき。

それは嫌と言うほど、サラリーマン時代に経験していた。

これだけ売っているのに、何故メーカーやキャリアの顔色を伺わなければならないのか。

商品は作るだけでは売れない、どんなに商品力があってもショーケースに並べただけでは売れないんだ。

売れる商品の影には、必ず営業の力がある。

営業こそ、事業の屋台骨だ。

当時の俺はその事を信じて疑わなかった。

だったら、自社で商品も作り、自社で販売もこなしたら最強では無いか。

 

だが、それには問題点があった。

俺の資本は、泣けなしのブランド品を質に入れて作ったこの現金10万円。

たった10万円なんだ。

この新卒の初任給にも満たない金額で何が出来るんだ。

商品を作る為の工場すら借りられ無いじゃないか…。

その時、途方に暮れていた俺の頭に、昔誰かが言っていた言葉が浮かんだ。

ビジネスは、常に今身の回りに有るもので作る。

 

今の自分に、あるもの…?

!!

俺の頭の中で、何かが閃いたのだった。

続く。