前回までの話↓↓
以下、本編。
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トシさんにお礼を言い、お店を後にした俺は栄5丁目から名駅方面に徒歩で向かった。
その時点で全財産は3,000円を切っていた。
途中、住吉通り商店街に立ち寄り、昔タツヤやサトル達とよく遊んだクラブの前を通ったりして当時を懐かしんでいた。
もちろん、朝方だったのでクラブやバーは営業していない。
今思うと、何故あの時、住吉通り商店街に寄ったのか。
それすら、奇跡に思えてならない。
あの時、ふと懐かしく思い、住吉通り商店街に立ち寄っていなければ…。
もしかすると、今の俺は存在していなかったのかもしれない。
いや、間違いなく存在していなかっただろう。
当時の状態であれば、良くて刑務所、悪くて野垂れ死んでいた可能性が高いのだから。
それは朝の6時、7時頃だったか。
まだ空が白けて間もない頃合いだった。
住吉通り商店街の一角にある、ラーメン屋藤一番の前にふと目をやった瞬間だった。
身長185センチ前後、筋肉隆々に金髪ロン毛、全身にタトウーの男がショルダーバッグを提げて歩いている。
俺は思わず、凝視していた。
それほど、あの男の風体にそっくりだったからだ。
そう、あの男とは、悪友、タツヤの事だ。
俺は目を擦ってもう一度、見た。
朝の日差しが視界を遮る。
姿が霞んで見えた。
本当にタツヤか?
そんな偶然があり得るのか?
でも、似ている…!
俺が自問自答をしていると、向こうも何かに気づいたみたいに立ち止まった。
そして、目が合った。
タツヤ!!(リョウちん!!※そう呼ばれていたのだ)
俺はタツヤに向かって一直線に走った。
何かの青春ドラマみたいに。
そして二人で抱擁し、お互い偶然の再会を祝った。
こんな事が起こり得るのか。
このタイミングで!?
運命とは末恐ろしいもの。
諦めなければ、運命は自分の行きたい方向に変える事ができる。
自分の強運に、改めて感謝した。
だが、この再会が未だかつて経験した事の無い生活の幕開けになるとは、全く予想だにしていなかった。
続く。