前回までの話↓↓
以下、本編。
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満喫を出た後、俺はもう一度栄に戻ることにした。
全財産残り3,000円と少し。
当然、電車は使わない。
いや、使えない。
徒歩で、金山からもう一度栄に向かった。
栄に、僅かながら心当たりがあった事を思い出したからだ。
以前、サラリーマンをしていた頃。
少しばかり名古屋に住んでいた事があった。
その頃、地元同高の同級生が名古屋に住んでおり、その人物から紹介されたバーが栄5丁目付近にあったのだ。
一縷の望みを託し、俺はそのバーに向かった。
僅かな記憶を頼りに、栄5丁目付近で目的のバーを探す。
雑居ビルの2階という記憶だけはあった。
中日ビルの裏辺りを歩いている時、たまたま目に入った看板を見て俺は立ち止まった。
ここだ。
丁度そのバーは、マスターがオープンの準備をしている頃だった。
トシさん。
俺がそう呼ぶと、マスターが振り向いた。
あれ、確かリョウくんじゃない?久々だね〜、取りあえず中に入りなよ。
幸いマスターも俺の事を覚えていてくれた。
奇跡だ。
俺はお言葉に甘え、店内に入った。
そして、ここ数日間の経緯、事情を説明した。
手持ちが残り3,000円と少しだという事、何日間もまともに寝ていないという事。
色々、説明した。
そしたらなんと、マスターのご高配で一晩店内で過ごしてくれて良いという事になった。
朝方店仕舞いしたら、ソファ席で寝ていけば良いよ、と。
お代はお酒一杯分だけで良いよ、と。
ここでも俺は奇跡に恵まれる事ができた。
気持ちを切り替え、自ら運命と向き合う事でここまで引き寄る事が出来るのか、と。
だが、本当の奇跡が起きるのはここからだった。
続く。