前回までの話↓↓

第1話 脱サラ直後の話①

第2話 脱サラ直後の話②

第3話 脱サラ直後の話③

第4話 脱サラ直後の話④

第5話 脱サラ直後の話⑤

以下、本編。

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お客さん、ランチの営業時間始まるんで、そろそろ。

 

目を開けると、そこにはデニーズの女性店員がいた。

なるほど、深夜にデニーズに入り俺は10時過ぎまで寝ていたというのか。

235円の珈琲一杯で。

当然だが周りの客が全て入れ替わり、昨日とは打って変わったホワイトカラーの打ち合わせ場所となっていた。

そんな中に、薄汚れた俺が一人…。

そそくさと会計を済ますと、足早にお店を後にした。

お会計の時、店員の顔が恥ずかしくて見れなかったのを覚えている。

さて、どこへ行こうか。

 

目下、行く宛も無く彷徨う他無かった。

足も、痛い。

無理な体勢で寝たからなのか、背中も痛かった。

満身創痍とはまさにこの事。

昔、サラリーマン時代、営業先から終電を逃し近所の公園で一晩を過ごした事があった。

翌朝、ボロボロのスーツで会社に出勤したのを覚えている。

あの頃は、帰る場所があったな。

同じ満身創痍でも、全く状況が違う。

帰る場所が、欲しい。

 

帰る場所、住む場所があるという事がこれほどまでに有難い事だなんて。

ホームレスになって、ようやく分かった気がした。

テレビでよく、発展途上国にある紛争地域の人たちが帰る家を無くし難民化したというニュースを聞いても、ピンと来なかったが。

皮肉なものだ、人はいざ自分が同じ目に遭ってみないと他人の気持ちなんて理解出来ない。

それをこんな形でまじまじと思い知らされる事になるとは。

家がある、帰る場所がある、そんな当たり前に思っていた事が当たり前じゃ無い。

全財産も残り3,600円と少し。

これから、どうなるのだろう。

希望が、全く見えなくなっていた。

続く。