前回までの話↓↓
以下、本編。
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デニーズを出てからどれくらい経っただろう。
いや、時間にしたらたかが知れている。
だが体力を消耗し、憔悴しきった俺にはそれは何時間にも感じた。
気がづくと、俺はJR金山駅の前に立っていた。
栄から金山まで、歩いてきたのだ。
底がすり減った靴で…。
足の裏がジンジンする、腰も痛い。
もう限界だ。
風呂も丸二日入っていない。
シャワーを浴びたい。
出来れば、湯船に浸かってゆっくりしたい。
許されるなら、ふかふかのベッドで気の行くまでゆっくりと眠りに就きたい。
…。
だが、そんな事は当時の俺には夢物語だった。
全財産3,600円と少し。
贅沢は言ってられない。
明日の命すら保障できない状況。
でもせめて、シャワーだけでも浴びたい。
明日の命より、今この瞬間、身体を、気持ちをスッキリさせたい。
そう思った俺の目の前に、マンボウという漫画喫茶が現れた。
中にはシャワー設備があるとの記載もあった。
基本料金ALLはじめの1時間450円。
当時の俺にとっては大金だ。
450円あれば、下手したら3日間は食事に困らない。
だが、とにかくシャワーを浴びたかった。
当然着替えもない。
シャワーを浴びたところで、また汚れた服を着たら同じ事じゃないか。
でも、だけど、どうしても俺はシャワーを浴びたかった。
全身臭かった。
俺は無心で店内に入ると、即シャワーブース利用の予約をしてボックス席に入った。
数日ぶりの個室空間。
たかだか1畳にも満たない、その空間が楽園に感じられた。
少しほっとしたのか、急激な眠気に襲われた。
だが、ここで寝てはシャワーを浴びる事が出来ない。
ここは我慢だ。
プルルルルルル。
インターフォンがなり、シャワーの順番が回って来たと伝えられた。
人生でこれほど、シャワーの順番を渇望した事があっただろうか。
半畳にも満たない小さなシャワーブース。
俺は頭からシャワーを浴び、この数日間の汚れを洗い落とした。
今でもこの時の爽快感を覚えている。
シャワー一つで、これほど幸せを感じる事ができるとは…。
熱々のシャワーを全身に浴びながら、俺は心の中に微かに湧き上がる活力を感じていた。
続く。