全財産4,000円、カネ無し、コネ無し、ガクレキ無しの三拍子の俺が辿り着いた街、名古屋。
週末の繁華街に嬌声がこだます中、俺は一人、喧騒の中で取り残されていた。
まずは携帯を充電しよう。
入った先は栄5丁目にある広小路沿いのマクドナルドだった。
店内には充電用のコンセントがあるカウンター席が見えた。
幸い席も空いている。
飲み会の待ち合わせだろう、着慣れていないスーツを身にまとった若い男性客が何名か店内で騒いでいる。
俺にもそんな頃があった。
仕事が終わったら家で缶ビールを片手にテレビを観てゴロゴロ、週末は同僚と飲み会。
そんな些細な日常さえ、今は遠い世界の事の様に感じた。
いつから、こうなってしまったのだろう。
戻れるなら、過去に戻りたい。
…。
お客様ご注文はいかがされますか?
感傷に浸っていた俺を尻目に、店員が声をかけてきた。
「ダブルチーズバーガー」と言おうとして、止めた。
そんなお金は無い。
散々迷った挙句、お水と100円バーガーを注文して席に着いた。
店員の目が痛々しかった。
いつぶりだろう、マクドナルドでご飯を食べたのは。
確か、小学生ぶりだったか。
あの頃は、家族もバラバラでは無かったっけ…。
元々ファストフードやポテトチップスなどの油物が口に合わなかったのもあり、そういった店は敬遠していた。
が、今は贅沢を言ってられる状況では無い。
まずは何でも良い、食べないと。
1日でも長く、飢えを凌がないと。
不思議と、今までは苦手に感じていたハンバーガーのピクルスの味が、何故か今日は美味しく感じたのだった。
続く。