この話は、私が一般社員からエリアマネージャーになるまで勤めた、日本一の体育会系営業会社、株式会社H通信で過ごした20歳〜25歳までの実録である。
THE SALES
〜元○戦士トップセールスが語る、実録・営業日誌〜
第3話
『研修』
〈広域法人営業部 中途採用者新人研修会場〉
内定通知を受けた翌週、私はH通信本社がある東京都豊島区池袋の本社ビルに居た。
H通信はカンパニー制を採用しており、事業部毎に法人格を持っていた。
例えば、私が最初に配属された広域法人営業部は業種特化事業部に所属していた。
業種特化事業部はH通信の事業部であると同時に、株式会社Iグループ(以下、Iグループ)として独立している。
Iグループの社長は本体であるH通信の執行役員を兼ねていた。
つまり、席はH通信に置きながら子会社として独立採算を取っているIグループに出向している形になる。
もちろん、それは新人である私も例外ではない。
会社が発行する社会保険証にはH通信の文字が印字されている。
〈皆さん、初めまして。本日はH通信Grp中途採用者向け導入研修にお越しいただき有難う御座います。〉
研修担当とおぼしき男性社員が、体育会系の企業らしく元気の良い声で挨拶をした。
今回の導入研修は2泊3日で行われるという。
研修会場には20名程の中途採用者が集まっており、年齢も30代が中心のようだった。
『彼等(彼女等)が同期になるのか…負けないぞ』
俺は心の中でそうつぶやいた。
〈あ、こんにちは。今日は宜しくお願いします。〉
2つ隣りに座っていた、いかにも人の良さそうな男性が俺に声をかけてきた。
話を聞くと、私と同年代という事も分かり、打ち解けるのに時間はかからなかった。
その男こそが、その後の営業部内でライバル関係となるK石だった。
(もっとも、今思えば周りがその様に持て囃しただけで本人同士はそこまでライバル意識を持っていた訳ではないのだが…。)
彼はその数年後、H通信Grp内で上場企業子会社社長という重役を歴任した後、単体で独立を果たしている。
何を思ったのかH通信を不動産会社と勘違いして面接を受け、この導入研修で初めて事業内容を知ったというかなりの天然ぶりに驚いたのを今でも覚えている。
〈ガチャ〉
研修が始まるや否や、勢い良くドアが開き、慌ただしい足音と共に1人の女性が入ってきた。
どうやら遅刻をしたようだ。
その女性は悪ぶれることも無く、研修担当に軽く会釈をした後、あろうことか私の真隣りに座った。
〈ちょっとあんた、悪いけどボールペン貸してくれない!??〉
とてもふてぶてしく、彼女はそう言って私の目の前に左手を突き出した。
年齢は30代中盤といったところか…。
『この2泊3日の研修、何事も無く終われば良いが…。』
研修初日。
何とも言えない、波乱の予感がしたのだった。
(文=泉了 写真はすべてイメージです)
営業処方箋 -実践家のための徹底使い切りBOOK
内容紹介
営業処方箋というタイトル通り、営業活動を成功させるために重要なエキスを、これほど簡潔にわかりやすくまとめた書籍は貴重な存在と言える。「実践書」というコンセプトにふさわしくサイズもB6版のポケットサイズに仕上げられており、毎日の営業活動にも携帯できる「使える実践書」である。能書きをだらだらと述べる本ではない。その意味では従来の営業ノウハウ本と一線を画しており、読破するのに時間はかからないが読み返すほどに手放せなくなる営業パートナー的存在となるだろう。営業の定義から始まり、マインドセット・目標設定・ラポール構築・営業アプローチ・クロージングの各段階について、考え方と具体的な営業技術が「即実践」できるように解説されている。営業経験の浅い読者にとっては基本の再認識と体得、長らく営業現場に身を置く読者にとっては自分自身の営業プロセスの再確認と問題点の発見及び具体的な改善・解決方法を見いだせる指南書=文字通り営業処方箋となるであろう。読めば読むほど、実践すればするほど本書に対するコストとPOI(投資回収率)が上がるようにという著者の誠実な執筆姿勢が伝わってくる。本文全右ページに「読書回数チェック欄」が設定されており、読者の皆さんにはぜひ「わかった」レベルから「できた」レベルまで、本がボロボロになるほど使い切ってもらいたいというのが著者の望みであろう。(S.O)