はい、終了!
室長の山田がそう言うと、俺はペンを置いた。
午前中に渡った試験が終了する。
手応えはあった。
『ほな、答え合わせしとくから昼飯でも食ってきやー』
俺は一旦オフィスを後にして、近隣の飲食店で昼食を取る事にした。
と、言っても財布の中には殆どお金が入っていないので大したものは食べれない。
ちょうどオフィスの目の前にあるコンビニで弁当を買い、鴨川を眺めながら川原で食べる事にした。
京都市内の中心には鴨川が流れており、その川原には老若男女がくつろいでいるのは京都に行った事がある人間ならよく見る光景だ。
『この景色は、それこそ幕末やそのもっと前から変わらないんだよなあ』
そんな感傷に浸りながら、俺は鴨川とその近辺で戯れる人たちの人間観察をしながら弁当を食べていた。
大学が大阪にも関わらず京都に住んでいたのは、歴史が好きだったからだ。
歴史の中でも特に徳川幕府末期、通称”幕末”にハマっており、その中心舞台となった京都に住みたかったのだ。
念願叶い、今京都に居る。
『幕末の志士と同じ川を見てるんだなぁ…。』
そんな事を考えながら。
おっと、そろそろ昼食時間も終わる頃だ。
俺は左腕に付けていた安物の腕時計の針を見て、慌ててオフィスに戻った。
オフィスに戻り会議室に入ると、室長の山田が入って来た。
ま、及第点てとこやな。合格や!
その言葉を聞き、俺はホッとした。
これでようやく営業マンとして現場デビューが出来る…。
そう思った時、山田がこう言った。
ほな、次はロープレやな!現場ロープレの試験や!
『ロープレ!?』当時の俺はまたしても聞き馴れない言葉を耳にし、少したじろいだ。
コンコンコン。
会議室のドアがノックされ、『入って来てええで!』と山田が言う。
会議室のドアが開いた。
入って来たのは、先ほどの事務員の女性だった。
続く。