この話は、私が一般社員からエリアマネージャーになるまで勤めた、日本一の体育会系営業会社、株式会社H通信で過ごした20歳〜25歳までの実録である。
THE SALES
〜元○戦士トップセールスが語る、実録・営業日誌〜
第2話
『内定』
〈泉了さん、お入りください〉
面接官の女性に促されるまま、私は会場の扉を開け椅子に座った。
目の前には黒ぶち眼鏡が似合う、いかにも”キャリアウーマン”風女性面接官。
〈初めまして、本日面接官を勤めさせていただきます、K浦と申します〉
K浦と名乗った女性面接官は、予め提出していたエントリーシートに目を通すと記載内容についてごく一般的な質問を2〜3個し、職務経歴書の方に目を向けた。
〈あら、泉さん。まだお若いのに前職でも実績を残されてたみたいですね。〉
H通信に転職を試みる前にも、実はIT関連の営業会社で正社員として働いていた俺はその頃の職歴内容をエントリーシートと同時に提出する事になっていた職務経歴書に記載していた。
「はい、京都の、40名弱ほどの会社ではあったのですが、何度か営業で月次MVPに選ばれた事があります」
その当時は、NTTが民営化されBフレッツやフレッツ光プレミアムの販売代理店が関西一円で大々的に募集をされた頃で、私が勤めていた会社もちょうど京都エリアのフレッツ光マンションタイプの販売を請け負っていた。
私はその会社で、365日中300日以上は雨の日も雪の日も折りたたみ自転車をこいで京都市内を南は伏見区から北は岩倉村まで一日中走り回って集合住宅に飛び込み営業を繰り返していたのだ。
そのお陰もあり、短期間で急激に訪問営業に馴れる事ができ、京都の下町の混沌にも揉まれ営業として場数を踏むことが出来たので、若いながら度胸と根性にだけは自信があった。
〈泉さんも随分泥臭い営業をしてこられたみたいですね。ある意味うちの会社にもすぐ馴染めるんじゃないかしら。〉
私はその言葉を聴き、面接に手応えを覚えた。
そして何より、私はそれまで10種類以上のアルバイトを経験してきたがそのどれも面接までたどり着いてから落とされた事は一度も無かった。
〈この面接に受かれば、泉さんが配属される部署はH通信の中でも珍しく平均年齢が高い部署、つまり前職である程度キャリアを積んでいる中途採用の方々がいる大手法人営業部になるわけで、恐らく泉さんが最年少だと思うんだけど・・・、泉さんガッツ有りそうだからきっと大丈夫でしょう!オジさん方なんて皆すっとばしてさっさと出世しちゃってくださいね!〉
K浦からそう乗せられ意気揚々となった私は元気よく返事をし、改めて真剣な目でK浦を差す様に見つめた。
「本当に、学歴も無ければスーツの着こなし方一つ知らない、20歳そこそこの私なんかが仮にも業界で最大手と言われているH通信で出世が出来るのでしょうか?」
〈大丈夫!コーポレートサイトにも記載してある通り、うちは学歴不問・年齢性別国籍不問・完全実力主義!これは間違いなく噓偽りないから”日本語だけ”出来れば大丈夫。泉さん次第で、数字さえ残せばどんどん出世していきますよ!会社員で月収100万、200万もウチでは全然普通です。〉
その言葉を聞いた俺は、胸の奥底に熱く燃えるものを感じたのだった。
その一週間後、私の自宅に普通郵便で採用内定通知が届き、その翌週H通信での初稼働日を迎える事となった。
俺はほっと胸を撫で下ろすと同時に、期待に胸を踊らせた。
これから訪れるであろう、ハバネロの様に辛く激しい日々があることも知らずに…。
(文=泉了 写真はすべてイメージです)
営業処方箋 -実践家のための徹底使い切りBOOK
内容紹介
営業処方箋というタイトル通り、営業活動を成功させるために重要なエキスを、これほど簡潔にわかりやすくまとめた書籍は貴重な存在と言える。「実践書」というコンセプトにふさわしくサイズもB6版のポケットサイズに仕上げられており、毎日の営業活動にも携帯できる「使える実践書」である。能書きをだらだらと述べる本ではない。その意味では従来の営業ノウハウ本と一線を画しており、読破するのに時間はかからないが読み返すほどに手放せなくなる営業パートナー的存在となるだろう。営業の定義から始まり、マインドセット・目標設定・ラポール構築・営業アプローチ・クロージングの各段階について、考え方と具体的な営業技術が「即実践」できるように解説されている。営業経験の浅い読者にとっては基本の再認識と体得、長らく営業現場に身を置く読者にとっては自分自身の営業プロセスの再確認と問題点の発見及び具体的な改善・解決方法を見いだせる指南書=文字通り営業処方箋となるであろう。読めば読むほど、実践すればするほど本書に対するコストとPOI(投資回収率)が上がるようにという著者の誠実な執筆姿勢が伝わってくる。本文全右ページに「読書回数チェック欄」が設定されており、読者の皆さんにはぜひ「わかった」レベルから「できた」レベルまで、本がボロボロになるほど使い切ってもらいたいというのが著者の望みであろう。(S.O)