今日から不定期に織田信長の実像に迫るコラムを書いていきたいと思います。
皆さんは「織田信長」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。
戦国の覇者・カリスマ・戦国時代に終止符を打った英雄・天才…というプラスのイメージを持たれる方もいれば、
比叡山を焼き討ちした悪鬼・第六天魔王・ワンマン・恐怖政治…というマイナスのイメージを持たれる方も多いと思います。
これほどまでに評価・現代のイメージが正反対に分かれる戦国武将も他にはいないでしょう。
では実際、織田信長とはどんな人物だったのか。
その人物を知るに当たって、一番正確な方法は今昔問わず本人に直接会うことです。
伝聞では正確性に欠け、またその人物の感受性や主観によって実像が婉曲して伝わるものですので鵜呑みにはできません。
もちろん、織田信長は既にこの世を去っていますが、
幸いにも、実際に織田信長と同じ時代に生き、かつ来賓もしくは直参、配下として直接本人に会い、言葉を交わしている方の見聞録が現代に伝わっています。
それが、
の3作です。
①の著者、ルイス・フロイス氏はポルトガル出身のカトリック司祭、宣教師であり、イエズス会士として戦国時代の日本に来日し、布教活動を行いました。そして実際に織田信長や豊臣秀吉、その他数多くの戦国武将に直接謁見し、本人たちと直接会話をした人物です。
②の著者、太田牛一氏は尾張出身の戦国武将で、当初は信長公の直臣、柴田勝家の足軽衆でしたが、弓の腕を信長公に買われ、側近に抜擢された人物であり、配下として直接信長公に仕えていた人物です。
③の著者、小瀬甫庵は太田牛一氏と同様尾張出身で、信長公の乳兄弟であり、直臣でもあった池田恒興に医者として仕えていました。その為、信長公に直接謁見して会話を交わした①・②の著者と比べると少し伝聞寄りではありますが、当時いち医者としては限りなく近い距離にいた事実は確かです。
さて、これらの信長公の実像を知る為の貴重な三大史料の中から私が最良の一冊として選ぶのは①の日本史(ルイス・フロイス著)です。
理由としては、
②は①と同様、信長公に直接謁見し、会話を交わしていますが、スタンスが違います。①は海外からの来賓として、②は配下としてになりますので、②については立場上書けない内容が多分にあったと予想できるからです。会話の一言で人生どころか生殺与奪が決まったあの時代、しかも信長公相手に発する一言一句はまさに命がけです。それを資料として後世まで残るであろう文章なら尚更、配下としては差し障りのないことしか書けないことが容易に想像できます。その為、多少なりとも主観が混じっており、客観性を伴う史実書としては今ひとつ説得力に欠けるのではと感じた次第です。
③については、既に申し述べた通り、①・②の著者とは違い、直接信長公に謁見できる立場ではなかったでしょうから、あくまで池田恒興や他の家臣からの伝聞でしか信長公の実像に迫ることが出来なかったことが伺えます。その為、第一級の資料ではあるものの、①・②と比べるとどうしても物足りなさが否めません。
よって、消去法からも①となりますが、①の著者ルイス・フロイス氏は当時国内最高権力者と言っても過言ではなかった信長公と外国人ながら18回も直接謁見しており、限られた家臣しか立ち入れなかった岐阜城宮殿内部を信長公から直接案内されたり、お膳を信長公や信長公の嫡子から直接運ばれ食卓を囲んだりと、側近ですらあり得ないような対応を信長公からされています。併せて、ルイス・フロイス氏はイエズス会の中でも随一の文章家であり、その為、抜擢され日本に派遣されていたほど文章力にも長けていました。最後に、外国人であるという立場から、主観を交えず、信長公に対する配慮や、色々なしがらみの無い客観性の高い事実のみを書いている可能性が高い為、信長公の実像に一番近い資料だと思われます。
これらを踏まえて、今回から不定期的ではありますが「実像・織田信長」と題して、信長公の実像に迫っていきたいと思います。
〔真の織田信長像に迫る第一級歴史資料〕