この話は、私が一般社員からエリアマネージャーになるまで勤めた、日本一の体育会系営業会社、株式会社H通信で過ごした20歳〜25歳までの実録である。
THE SALES
〜元○戦士トップセールスが語る、実録・営業日誌〜
第5話
『ビールの女』
〈独りで眠れないの〉
ドアを開けて俺が応対するや否やK原はそういって半身を私の部屋に剃り出してきた。
『知るかッ!勝手に寝ろ。とりあえず入ってくるな。』
私は反射的にK原が開けたドアを無理やり閉じて追い出した。
〈ピンポーン〉
〈ピンポーン!〉
追い出したと思ったのもつかの間、今度は連打でインターフォンが鳴った。
〈ガチャ〉
今度は私の方から勢い良くドア開けた。
文句の一つでも言ってやろうと思ったからだ。
〈ごめん、一杯だけで良いからお酒付き合ってよ〉
そう言ってK原は引き下がろうとしない。
どこまでも食い下がってくる。
『まるで飛び込みの営業マンみたいだ。』
慣用句のフット・イン・ザ・ドアを連想させる状況に、私はため息を交えながらも少し可笑しくなった。
『ほんとに一杯だけだぞ』
私は一杯だけだと譲歩し、K原を部屋に招き入れた。
〈このビール飲んで良い?〉
まるで自分の部屋かの様に勝手に冷蔵庫を開けると、風呂上がりの為に冷やしておいた350mlの缶ビール2つの内1つをK手に取った。
『あんた、自分の酒はねーのかよ?』
どこまでもふてぶてしい女だと思いながら、仕方無く缶ビールを彼女にやった。
〈プシュ〉
〈カンパーイ〉
自分のタイプの女性以外とは絶対に2人でお酒など飲みたくないのだが、やれやれという気持ちで俺はK原と乾杯したのだった。
K原とベッドに座っていた俺は彼女の距離感の近さに少し苛立ちを覚えながらも、撓垂れ掛かってくるのをノラリクラリと躱した。
『おい、もうそろそろ1時間になるぞ。明日も早いんだし、もう酒も飲んだろう?さっさと自分の部屋に帰って寝てくれ。』
俺はそう言うと、飲み足りず不貞腐れてるK原を無理やり立たせて部屋から押し出したのだった。
『ふーっ、とんだ最終日前夜だったな』
俺は深いため息をつくと、一部始終の垢を落とすかのように風呂に入った。
(文=泉了 写真はすべてイメージです)
営業処方箋 -実践家のための徹底使い切りBOOK
内容紹介
営業処方箋というタイトル通り、営業活動を成功させるために重要なエキスを、これほど簡潔にわかりやすくまとめた書籍は貴重な存在と言える。「実践書」というコンセプトにふさわしくサイズもB6版のポケットサイズに仕上げられており、毎日の営業活動にも携帯できる「使える実践書」である。能書きをだらだらと述べる本ではない。その意味では従来の営業ノウハウ本と一線を画しており、読破するのに時間はかからないが読み返すほどに手放せなくなる営業パートナー的存在となるだろう。営業の定義から始まり、マインドセット・目標設定・ラポール構築・営業アプローチ・クロージングの各段階について、考え方と具体的な営業技術が「即実践」できるように解説されている。営業経験の浅い読者にとっては基本の再認識と体得、長らく営業現場に身を置く読者にとっては自分自身の営業プロセスの再確認と問題点の発見及び具体的な改善・解決方法を見いだせる指南書=文字通り営業処方箋となるであろう。読めば読むほど、実践すればするほど本書に対するコストとPOI(投資回収率)が上がるようにという著者の誠実な執筆姿勢が伝わってくる。本文全右ページに「読書回数チェック欄」が設定されており、読者の皆さんにはぜひ「わかった」レベルから「できた」レベルまで、本がボロボロになるほど使い切ってもらいたいというのが著者の望みであろう。(S.O)