初めてのテレアポ(電話営業)を経験して数日、俺は正式にKEIのアポインターとして採用された。
時給は1,000円、ただし稼働時間は短く3、4時間だった。
週フル稼働しても1週間で3万円もいかない稼ぎ。
それでも俺が満足していたのは、日に日にテレアポという仕事にのめりこんでいたからだった。
営業って、おんもしれぇーーー!!
最初は電話口で断られることも多かったが、アポイントを取った時の達成感にハマっていた。
テレアポを通し、営業のイロハを徐々に身に付けていたある日、野村が俺にある提案をしてきた。
イズミくん、”フルコミ”で一回やってみーひん??
フルコミ!?初めて聞く言葉に一瞬戸惑った。
フルコミ、つまりフルコミッション(完全歩合)の意味だが、当時の俺のボキャブラリーにはその言葉は無い。
話を聞くと”結果を出したら出しただけ稼げる”という事だった。
その反面、時給は発生しない訳だから当然”結果が出なければ収入は0円”となる。
当時KEIでは高校受験用の教材を5教科フルセットで100万円という超高額な金額で販売していた。
そしてもし、自分が取ったアポで現場の営業マンが成約したら売値の2割がバックされるという。
つまり、1件販売すれば即20万円稼ぐことが出来る。
1件取るだけで大卒初任給の月給相当分が稼げるなんて!
そんな世界がある事を初めて知った18歳の俺は、驚愕した。
そしてこの様な考えが頭の中に浮かんだ。
あれ、つまりこれって、営業力さえあれば学歴とか関係無く稼げるんじゃね??
今思えば、とてつもなく安直な考え方だが当時から俺は自分の直感に対して忠実に動いている。
そして、俺はこの後驚愕の行動を取り、18にして実家から1回目の勘当をされる事となった。
続く。