タクヤと呼ばれた男は、驚いた表情で立ち止まった。
身長185センチ以上、総髪のやせ形ではあるが、キックボクシングで鍛えた屈強な肉体。
全身に入ったタトウー、そして何より醸し出す危険な雰囲気。
本人に間違いなかった。
彼は遡る事、そこから更に4年前。
当時、光○信時代の名古屋支店に配属されたばかりの時代。
栄に住んでいた頃の遊び仲間だった。
毎晩の様に一緒にクラブに行っていた頃が懐かしい。
その後栄転し、転勤も多くなった俺は名古屋を離れ全国を飛び回る事になり、タクヤ達とも疎遠になっていた。
数年ぶりの、まさかの再会に俺たちは思わずお互いを抱きしめ合った。
「久しぶりだな!何してたんだよ!?」
俺たちは今自分が置かれている状況などをお互いに説明した。
話を聞くと、タクヤも相当な訳有りのようだった。
どうやら街でもめ事を起こし、その時相手方数名に結構な怪我を負わせてしまい、その仲間に追われているとのことだった。
そして現在は、知人のバーでセキュリティーをやりながら、知多半島の田舎にある「訳あり物件」に隠れ住んでいるという。
家賃はなんと”タダ”。
さすが「訳あり物件」だ。
そして、間取りは2DKで1部屋余っているという。
「りょうちゃん、一緒に住まんか?」
彼の提案に、俺は二つ返事で了承した。
”タダ”ほど高いものは無い、当時の俺は、その代償を知る由もなかった。