京都から名古屋に着き、財布の中を見るとシワが寄った千円札が4枚。
それが当時の全財産でした。
そして名古屋には知り合いも殆ど居ない。
岐阜の実家は勘当されて帰れない。
信用も無く、消費者金融もお金を貸してくれない。
ヤミ金に手を出すか・・・。
そう思った事もありました。
誰かを襲ってお金を・・・。
踏みとどまりましたが、貧困が犯罪を産む気持ちを理解しました。
好んでそうしようとは思わないまでも、最後の手段としてはありえる。
このままホームレスになり、野たれ死ぬか、もしくは犯罪を起こし社会不在となるか。
前者では生命的に終わり、後者では社会的に終わる。
いずれにせよ、絶望しかなかった創業当時。
いや、そもそも”創業”では無かった。
上場企業で支店長まで上り詰めた先にあったのは、裏切りと絶望。
そしてそれらの根源である、自分自身の慢心、エゴに更々嫌気が差していた。
宛も無く名古屋駅から栄方面に歩を進め、気付けば夕方。
もうすぐ日が暮れる。
食べ物はコンビニで購入し、店の前で食べるうまい棒3本。
その30円ですら、後先が見えない当時の自分からすると大金に思えて勿体なかった。
マクドナルドの100円マックすら遥か遠い。
そして日も暮れ、街を煌びやかなネオンが点していた。
俺は、栄4丁目、通称女子大小路前の大交差点に立ち尽くしていた。